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開成高校入試問題(2003)より

生物が進化するとき、「下等な生物から、高等な生物に進化した。」とか、「哺乳類は爬虫類より高等である。」という言い方をすることがあります。
この言い方は暗に、「我々人間が、生物界で最も高等な生物である。」という考えをベースにしています。
さて、これは科学的に正しいと言えるでしょうか?
このことを考えるのに、格好な入試問題があります。
2003年の開成高校の入試問題です。

ちょっと見てみましょう。
(図版、問題文の細部等、オリジナルと異なる部分があります。)
受験生以外は、頑張らずにオキラクに目を通して下さいね。

=========================================================
 脊椎動物の心臓について、以下の問1~6に答えよ。
心臓01
      図1 ヒトの心臓の断面図

問1 図1のア~エのうち、右心室はどれか、記号で答えよ。
問2 右心室から出た血液は肺と全身のどちらへ送られるか、 答えよ。
問3 問1を解答する際に決め手となった右心室の特徴を、10字以内で記せ。

 下の図2はいろいろな動物の心臓のつくりの模式図である。
1心房1心室 2心房1心室 2心房1.5心室 2心房2心室
 魚類     両生類       爬虫類       鳥類・哺乳類
                図2

問4 魚の心臓は1心房1心室である。しかし肺をもつ脊椎動物の心臓はすべて2心房であり、循環系が2つに分かれている。このような違いが生じる理由としては、えら肺の構造上の違いが考えられる。なぜ肺呼吸をする生物には2つの循環系が必要だったのか、考えられる理由を次のア~エの中から1つ選び、記号で答えよ。
  ア 肺をとりまく毛細血管は細いので、高い血圧には耐えられないから。
  イ 肺はえらよりも複雑で表面積が大きいので、専用のポンプで強く血液を送る必要があったから。
  ウ 肺はえらと異なり空気に接しているので、空気に触れない他の器官とは循環系を分ける必要があったから。
  エ 心臓は休みなくはたらいているので、酸素の多い血液を肺から直接送る必要があったから。

問5 ワニはトカゲやヘビの仲間であるが、心室の壁は完全である。ただし、右心室からは肺へと全身への2本の動脈が出ており、陸上では全身へ通じる動脈の弁は閉じているが、水に潜るとこの弁が自動的に開くようになっている。哺乳類(ほにゅうるい)の胎児は、左右の心房の壁に弁があり、この弁は出産前には開いているが、出産と同時にふさがってしまう。ワニの心臓について、水中で弁が開くことにはどのような利点があるか。当てはまるものを次のア~オの中から1つ選び記号で答えよ。
  ア 肺に行くはずの血液を少しでも多く全身に回し、血液中の酸素を有効利用する。
  イ 全身に行くはずの血液を少しでも多く肺に回し、酸素を余分に取り込む。
  ウ 全身から来た血液と肺から来た血液をよく混ぜ合わせ、どの組織へも同じ条件の
   血液を送る。
  エ 肺から来た血液をできるだけ多く全身に回し、酸素を全身の組織に送り込む。
  オ 全身から来た血液をできるだけ多く肺に回し、二酸化炭素を肺に捨てる。
問6 カエルのような両生類には、心臓から流れる血流量を変化させる仕組みが備わっている。呼吸時には肺への血流量が増えるが、呼吸を止めると肺への血流量が減り、全身への血流量が増える。このことを踏まえて、なぜカエルの心臓が2心室にならないのかを考察した。生物学的に正しいと思われるものを次のア~エの中から1つ選び、記号で答えよ。
  ア 哺乳類のような完全な2心室の方がより効率的に血流量を変化させられるが、カ
   エルは下等な動物なので2心室に進化できない。
  イ 2心室の循環系は複雑すぎるので、変温動物であるカエルには、維持することが
   できない。
  ウ 2心室では、肺への循環系と全身への循環系が直列になるので、呼吸を止めたと
   きにも肺にすべての血液が流れてしまい、呼吸効率の悪いカエルの肺では酸素の取
   り込みが追いつかなくなる。
  エ 2心室では、肺への循環系と全身への循環系が直列になるので、水に潜ったとき
   に、肺へ行くはずの血液を全身に回すことができず、肺で多くの酸素が消費されて
   しまう。
=========================================================

さて、解答です。
問1 イ   問2 肺   問3 壁の筋肉がうすい。(9字)   
問4 イ   問5 ア   問6 エ

簡単に解説していきましょう。

問1 図1は医者が患者と対面したときの心臓の図です。対面しているので、左右が逆です。
  ア:右心房   イ:右心室   エ:左心室   オ:左心房   です。
問2、3 血液を心臓の外に送り出すポンプが心室です。右心室は肺へ、左心室は全身に血液を送り出しています。全身に送り出す方が力がいるので、左心室の方が、筋肉の壁が厚くなっています。
問4 それぞれの循環系を以下のように図式化してみました。

     循環系の進化
  魚類        両生類・爬虫類       鳥類・哺乳類(と一部の爬虫類)

点線で囲んだ部分が心臓です。赤い矢印は、肺循環です。
魚類の場合は、心室はエラを通して全身に血液を送っています。
エラと、全身が直列なのです。
ところが魚類以外は、心臓から肺のみに向かう血管、心臓から全身のみに向かう血管が分かれています。
こうすれば、『血流抵抗』の大きい肺にも、大きな血圧をかけ、充分な量の血液を流すことができるのです。
魚類は、エラと全身が直列ですから、心室によって発生した血圧が、エラと全身に分割されてしまいます。
それでも問題ないほど、エラの『血流抵抗』は小さいということです。
(『血流抵抗』という造語を使ってみました。オームの法則の血液版のような考え方です。)
問5 ワニの循環系を問題文に従って図式化してみました。

       ワニ循環
              ワニの血液循環

右心室から肺へ向かう血管と、全身に向かう血管があります。
この血管の弁は、陸上では閉じ、水中では開いています。
陸上では、思う存分肺呼吸ができますから、循環するすべての血液を肺に通します。
ですが、水中で肺呼吸は不可能です。
水中では、肺に血液を送ることは無駄なのです。
ですから、弁を開いて、肺に行く血液の一部を、全身にまわしているのです。
問題文中にある、『哺乳類(ほにゅうるい)の胎児は、左右の心房の壁に弁があり』とあります。
この弁(穴)は、卵円孔と呼ばれています。
哺乳類の胎児は、へその緒を通して母親から酸素を受け取るので、肺は使いません。
子宮内では、使わない肺に余分な血液を送らないための仕組です。卵円孔は、出産後数時間以内で閉じるようです。
問6 カエルの血液循環を図式化しました。

      カエル循環
水中では心室から肺への血流を制限している       もし2心室だと、、、、、

水中では、カエルは使わない肺へのへの血流を制限しています。
もしカエルが2心室だと、こんな高等テクニックは使えません。
右上図を見て下さい。
選択肢文中の『直列』の意味がわかると思います。
直列ですから、一か所の血流を制限すると、血流すべてを制限してしまうことになるのです。

この問題を解くと、ワニやカエルの循環系は、水辺での生活に見事に適応していることが理解できます。
『哺乳類に比べて下等』なんてことはありません。
水辺での生活に限れば、『哺乳類より高等』とすら言えます。

さて、開成高校の先生は、なぜこのような問題を出したのでしょう?
きっと「高等とか下等という考え方は、生物のことをよく知れば知るほど無意味になる。」というメッセージを受験生に送りたかったのではないでしょうか?
だからきっと、誤りの選択肢で『下等な動物なので2心室に進化できない。』などという『非科学的』な言い回しを用いたような気がするのです。

テーマ : 自然科学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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本名は麻生 隆。
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